IPPUDO OUTSIDE|ラーメンや一風堂にまつわる“ヒト・モノ・コト”にフォーカスするウェブマガジン

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IPPUDO JAPAN

「チョコレートショップ」PR・後藤さんが綴る、
「#味噌赤丸2019」博多の老舗コラボが実現するまで。

一風堂の冬の定番といえば、常連のお客様にはすっかりおなじみの「味噌赤丸」。しかしながら、このラーメンのスープ表面に浮かべた香油にカカオが入っていることは意外と知られていないかもしれません。2019年版の「味噌赤丸」は、このカカオ香油をさらに美味しく改良しようと、福岡を拠点に長い歴史を持つ洋菓子専門店「チョコレートショップ」さんにご協力をいただきました。商品開発の流れを常に並走してくれた「チョコレートショップ」PR・後藤暢子さんに、「味噌赤丸2019」が完成するまでの道のりを綴っていただきました。

灼熱の博多の夏に、アツい企画が立ち上がる。

今となっては恋しささえ覚えるような、自分の体温をはるかに超えた気温で溶けそうなほどに暑いお盆の真っ只中に、企画のお打ち合わせはスタートしました。一風堂のマーケティング担当の前園さんからご相談をいただいたのは、その1週間ほど前。 「後藤さん、冬の商品『味噌赤丸』で、コラボのご相談がありまして」 正直、びっくりしました。以前から、博多のお店同士でなにかご一緒できたら、というお話はしていましたが、商品での「コラボ」という流れは想像していませんでした。だって、ラーメンとチョコレートですから。事実、パリの一風堂さんの店舗では、弊社の三代目・佐野恵美子がパリで手掛ける「LES TROIS CHOCOLATS(レ トロワ ショコラ)」の商品を扱っていただいています。そう、あくまでもお食事のあとの「デザートメニュー」としか想像できていなかったのです。

chocolateshop 一風堂

双方の商品開発担当同士の初顔合わせの様子。まだ夏真っ盛りの頃。

お打合せの場で出たお話は、冬の人気商品「味噌赤丸」の「カカオ香油」を弊社「チョコレートショップ」で監修することができるか、というものでした。個人的には毎冬一度は食べる味噌赤丸。しかし、そこに「カカオ香油」というものが使用されていたことをこのときはじめて知りました。そしてお菓子としての「チョコレート」ではなく、香油にあわせる「カカオ」という要素でのご相談ということで、弊社のチョコレート製造部門の責任者であるショコラティエール・峰岸菜々に相談し、一緒にお打合せに入りました。

味噌とカカオの融点を探る開発

2019年11月に創業78年を迎えた弊社は、「博多のチョコのはじまりどころ」として、博多のお客様に長くご愛顧いただいてきました。初代・佐野源作が戦時中にヨーロッパまでトリュフチョコレートの修行に出たのち、帰国の際に船の航路の関係で予定外に立ち寄ったここ博多で妻・冨美子と出逢ったことが「チョコレートショップ」のはじまりです。

chocolateshop 一風堂

福岡市博多区にある「チョコレートショップ」本店

そして現在の二代目・佐野隆が「博多のお客様を大切にすること」と「日本人好みのミルク感の強いチョコレート」にこだわり続け、現在福岡市内に委託店舗を含め6店舗を構えています(2019年11月現在)。「日本人好み」と書きましたが、ここはとても重要なもので、チョコレートの本場、ヨーロッパではミルクの強いものはあまり好まれず、カカオ成分の強いものがメジャーです。いわゆる日本で販売されている「ミルクチョコレート」にいたっては、「こんなのチョコレートじゃない!」と一蹴されるほどに。

その違いは、カカオがそもそも「薬」として用いられてきた歴史にあります。砂糖とカカオの配合でうまれるのが「チョコレート」ですが、「カカオ」は時として薬膳であり、時として「香辛料」という立ち位置であったほどに、大切にされてきたものなのです。ですから、今回のこの企画は、まさにチョコレートショップが「チョコレート」を大切に、日本人の好みに合わせて開発してきた、その神髄を試されるものとなりました。

開発スタート時、「味噌の味を邪魔しないカカオ成分の低いもの」と「味噌に負けないカカオ成分の高いもの」の2パターンを峰岸が考え出し、試食会で試しました。ここで、我々の想像を覆す「カカオ成分が高いほうが美味しい!!」という結論がでます。

当初、カカオ成分が低くミルク感の強いもののほうが、味噌と溶け合い後味でチョコレート感が残りうまくなじむのではと考えていました。しかし実際は、カカオ成分の高さが味噌のコクを引き立て、食べ始めにガツンとカカオが香る、インパクトの強い試作品のほうに軍配が上がったのです。

chocolateshop 一風堂
chocolateshop 一風堂
chocolateshop 一風堂

1回目の試作の様子。カカオやミルクの配合が異なる3種類のチョコレートを持参し、そこから2方向に絞っていきました。

ショコラティエール・峰岸菜々のチョコレート愛

ところで、今回監修を担当させていただいた弊社のショコラティエール・峰岸ですが、入社当初から「歌って踊ってチョコが作れるアイドルになりたい!」と笑いながら言うような明るくて元気な女の子でした。しかし、2014年から連続3年出展させていただいたチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ・パリ」での経験などを経て、徐々に踊る時間、歌う時間までもがチョコレートに注がれるようになり、ついには自宅の一角に「チョコ部屋」を作ってしまうまでの『チョコレートの変態』に成長しました(笑)。

chocolateshop 一風堂

ショコラティエールの峰岸菜々さん。このラーメンのために何パターンもチョコレートを試作してくれました。

普段から、チョコレートと食材の相性を探求すべく、味噌汁に入れてみたりパスタにかけてみたりといった奇想天外な研究を個人的に積み重ねてきた彼女ですが、今回のお話をいただいた最初のご連絡からお打合せまでの1週間、毎日様々な味噌ラーメンを食べ歩いたと言います。

博多はとても独特なラーメン文化があり、「ラーメン屋」といえば豚骨なのです。しょうゆ、みそ、しおなどのラーメンは、強固な意志を持つことなしにはまずお店までたどりつくことはありません。ご多分に漏れず、峰岸もこれまで意識して味噌ラーメンを食べたことがなかったようで、「お店ごとに全然違うので、一風堂さんの味噌ラーメンがどんなものなのかを調べて想像しながらお持ちしましたが…」と最初の試食会のときには不安げでした。

「中途半端なことはしない」河原社長の金言

開発チームでの方向性が見え、いよいよ一風堂の創業者・河原社長が参加する試食会となった日、私と峰岸は想像を絶する緊張を予想していたのですが、ふたを開けて、とても拍子抜けしたことを覚えています。

「こんな味じゃ、つまらーん!」とどんぶりを投げられるのでは、という想像さえしていた中、河原社長は開発に至った経緯や使用しているカカオについて、一風堂の商品開発チームの皆さんに、そして我々にも、とても紳士的に、そして思慮深く敬意を持って様々なことを聞いてくださいました。

博多のラーメンを全国に広められた河原社長のお人柄にほだされ、たくさんお話をさせていただきました。そして一点突破で見えたのは「うん、このくらいカカオが強くて主張したほうが美味しいね。でも、もっと強くてもいいんじゃない?」 という社長のさらなる探求心、「中途半端なことはしない」という意志でした。結果、カカオ分75%、その中でもカカオマスが強めで、市販されているものではまずありえない配合という「味噌赤丸」のためだけのチョコレートに決定しました。

chocolateshop 一風堂
chocolateshop 一風堂
chocolateshop 一風堂

一風堂創業者・河原も試食。「通常の赤丸にも使いたいくらい」と太鼓判。

この試食会で弊社が監修させていただいたカカオ香油の採用が決定し、11月6日、皆さまのもとにお披露目となりました。

一風堂マインドにふれて、
今後のチョコレートショップも変わります

「先味」「中味」「後味」。開発ミーティングの際に、一風堂の商品開発担当・栁本さんがおっしゃっていた言葉が今でも心に残っています。床がずるずるしていて、女性ひとりでは入りづらいことが常識であったラーメン屋を、デートや女性ひとりでも気軽に入ることのできる立ち位置に昇華させたのが一風堂さんだと思いますが、その配慮は食べる前(先味)、食べているとき(中味)、そして食べ終わってお会計を済ませ、お店を出るときまで(後味)にわたって考えられている、というもの。弊社もチョコレートをはじめとした洋菓子を食べてくださる方のお顔を想像しながら新商品開発に取り組んでいますが、店舗で食べている表情がダイレクトに見えるお店だからこその緊張感を、ポジティブにおもてなしとして設計されていることに深い学びを得ました。今回、「カカオ」の可能性という意味で貴重なチャレンジをさせていただきましたが、開発の姿勢、お客様への想いをもっともっと多層で考えていく必要がある、というヒントをもらえた素晴らしい企画となりました。

chocolateshop 一風堂

商品のレシピが確定し、チョコレートショップと一風堂スタッフのみんなで記念撮影。チョコレートショップの佐野社長も駆けつけてくださいました。

「映え」の先をいく「#味噌赤丸2019」

昨今、何を食べるにしても、まずはスマホで写真を撮る人が増えました。食品を製造している企業としては、「いかに美味しそうに撮って拡散してもらうか」というパッケージへの配慮も重要なファクターになっています。ただ、今回の「味噌赤丸2019」は、もうそんな「SNS映え」を狙いに行くレベルではないと思います。味噌のコク、カカオのまるで九州の女性のような控えめでいて芯の強い主張(笑)、この2つが一風堂秘伝の豚骨スープのなかで泳ぎ、山椒ミンチがふわふわとその身にこのスープをまとうその様は、写真ではなく、一滴も余すことなく飲み干してしまう食後の感動でしか表現できないほどです。すでに好評をいただいており、二食目の方はチーズトッピングもしてくださっている投稿も拝見しています。味噌、チョコ、チーズ…もはやカオス、なのに美味しい。文章を書く仕事をしていながらこんなことを書くのはとても情けないのですが、この感動は、百聞は一食に如かず、です。ぜひ身も心もあたたまりに、全国の一風堂におでかけください。(あ、でも写真もぜひ撮ってSNSにあげてくださいね!)

chocolateshop 一風堂

●味噌赤丸2019の販売情報はこちらから
https://www.ippudo.com/news/2019_misoakamaru/

有限会社チョコレートショップ
1942年創業、“博多のチョコのはじまりどころ”として親しまれている洋菓子専門店です。おやつからお手土産、ご進物まで、老若男女を問わず多くの方に愛され、11月に78周年を迎えました。現在では福岡市内にて委託店舗を含め6店舗を構えています。
〒812-0024 福岡県福岡市博多区綱場町3-17
092-281-1826(本店代表)
https://chocolateshop.jp/

ライター後藤さん

WORDS by YOKO GOTOH
後藤 暢子

有限会社チョコレートショップ
株式会社フリーランス・常務取締役。中小企業の間接業務を複合的に受託するサービスの広報・PR部門を運営しています。

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