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IPPUDO PARIS

ついにオープン!「一風堂パリ1号店」。

「IPPUDO OUTSIDE」リリース時にご紹介した一風堂パリ店の準備。「MIHARA YASUHIRO」によるユニフォーム、オリジナルデザインを施した「ルノー カングー」の一風堂スペシャル仕様車など、初のパリ出店に向けたプロモーションが話題を呼んできましたが、その一風堂パリ1号店が満を持してオープンしました。食、ファッション、芸術など、あらゆる面において成熟した花の都パリ。そんな文化が深く根付いた街を舞台に、一風堂はどんなサービスを展開していくのか。その全容に迫ります。

WORDS by SHOTA KATO (OVER THE MOUNTAIN)

いくつもの壁を乗り越えて、念願のオープン

IPPUDO OUTSIDEをご覧の皆さん、こんにちは。IPPUDO OUTSIDE編集部の加藤です。ゴールデンウィーク、みなさんはどのようにお過ごしですか?僕はゴールデンウィークに限らず、大型連休はもっぱらインドアです。買ったのに読んでいない本を一気に10冊読んだり、映画やレコードを鑑賞したり。新しい情報を集中的にインプットする期間は、誰かにおすすめしたい気持ちが人一倍強い僕にとって、とても有意義な時間なのです。

さあ、そんな教えたがりの僕が今回お伝えするのは、海外の一風堂情報です。「一風堂の新たな海外店舗がフランスにオープンする」とアナウンスしたのは2015年10月のことでしたが、あれから4ヶ月(!)、満を持してパリ1号店となる「一風堂サンジェルマン店」が2016年2月19日にオープンを迎えました。

過去にIPPUDO OUTSIDEでご紹介したとおり、当初のパリ1号店は、市民の台所として知られるパリ中心部レ・アール地区のブラッスリー跡に誕生する予定でした。ところが想定外の工事遅れなどが影響して、後に控えていたサンジェルマン店が先にまさかのオープン。「一風堂パリ・ルーヴル店」(仮)は現在も工事の最中で順番が入れ替わり、サンジェルマン店がパリ1号店となったのです。日本の店舗と海外の店舗、その違いを挙げるとキリがありませんが、工事の面でいえば工期が遅れたり、ラーメン屋の工事が不慣れ故に日本の当たり前が通用しなかったりと、そんなアクシデントは海外では珍しくないそう。いくつもの壁を乗り越えて待望のオープンを果たしたサンジェルマン店。その全貌をご紹介しましょう。

一風堂サンジェルマン店

出店の舞台は「最もパリらしい街」

今回パリ1号店を出店したサンジェルマン地区は、歴史ある教会やギャラリー、高級ブティックやカフェなどが立ち並び、知的で洗練された「最もパリらしい街」とも評されるエリアです。ファッションウィークにはデザイナーやモデルたちが行き交います。そんなパリの伝統と革新が凝縮された街にオープンするサンジェルマン店のコンセプトは、“Maison du Ramen Premium”(メゾン・ドゥ・ラーメン・プレミウム)。ニューヨークやロンドンの一風堂で展開してきたラーメンダイニングではなく、「パリのファッション中心地にラーメン屋としてスタートしたい、誇らしい日本食を届けたい」という想いから、あえてラーメン主体で商品展開をする日本のラーメン店らしさが表現されています。

白と赤を基調とした店内と予約制のVIPルーム

店舗は1850年代の建物の雰囲気を残しつつ、白と赤を基調としたモダンな印象に仕上がっています。店内奥には予約制のVIPルームを完備。天井にあしらった「白丸元味」と「赤丸新味」の歌舞伎絵風デザインもパリジャン・パリジェンヌに好評なのだとか。やはり和テイストのエッセンスは海外で人気なんですね。

白丸元味と赤丸新味

現地にあわせたオリジナルメニュー開発

日本では「白丸元味」と「赤丸新味」のとんこつラーメンを二大看板商品に置く一風堂ですが、海外店舗では、現地住民の趣向や地域性を活かしたオリジナルラーメンを開発しています。サンジェルマン店では、定番のとんこつラーメンに加え、きのこや野菜で出汁を取った「茸香るベジ麺」(12ユーロ:約1,520円)を提供しています。

茸香るベジ麺

フランスといえば、マルシェに色とりどりの食材が並ぶように、美味しい野菜が豊富な農業大国。それ故にベジタリアンの人々も少なくありません。そんな菜食主義の人々にもラーメンを楽しんでもらうため、フランスの食材をふんだんに使い、試行錯誤を重ねて完成したのが「茸香るベジ麺」なのです。また海外では宗教上の理由などから、お肉を使ったラーメンを食べない人々も珍しくありません。そのような多様性にあわせて、サンジェルマン店では野菜を使ったラーメンの開発に踏み切ったそうです。ちなみに、店舗オープン時からベジタリアンメニューを提供したのはパリがはじめてなのだとか。

「茸香るベジ麺」は玉ネギ、リーク(西洋ネギ)、セロリなど8種類の野菜をじっくり煮込んだスープと、干しシイタケや昆布、大豆、ポルチーニ茸などから取ったきのこの出汁を合わせたダブルスープ。麺は卵を一切使わず、パプリカを練り込んだ自家製麺。トッピングにはフランスらしい野菜のラタトゥイユ、仕上げにトリュフオイルを使用するなど、日本とフランスの「美味しい」が融合しています。その彩りの美しさと食感の繊細さは食の都・パリでも話題になったそうです。サンジェルマン店の1日のラーメン出数の1/7を占め、ベジタリアンではない来店客からの注文も多いそうで、そのルックスもあいまって女性客にも人気なのでしょうね。

サンジェルマン店から広がる日本の食文化

サンジェルマン店のオリジナルメニュー開発を担うのは、エグゼクティブ・シェフの平田正志さん。平田シェフは一風堂の海外1号店にあたる「ニューヨーク イーストヴィレッジ店」でも、独創性あふれる料理で現地の人々を虜にした料理人です。和食の調理人として8年務めた後、ラーメン業界に転身したという平田シェフ。その丁寧な手仕事から開発されたラーメンは、味にも見た目にも「和」の繊細さが感じられます。

平田シェフ

サンジェルマン店では、前述のようにラーメン主体の商品展開ではあるものの、平田シェフがニューヨーク店の一品料理として考案した「平田バンズ」(ハンバーガーから着想を得た角煮をバンズで挟んだフード)や餃子などもラインナップ。さらに日本の食文化を代表する要素として、日本各地から選りすぐった日本酒、作り手から直接仕入れたシャンパンなどのアルコールも楽しめます。

長きにわたる食文化を持つフランス、そこで暮らす人々の食に対するこだわりは日本にも通ずるものがあります。歴史と文化、流行が融合するパリを舞台にした出店について、平田シェフは次のように語ってくれました。

「有り難いことに、お客様からは『すごく美味しい!』という、うれしいお言葉をいただいています。とんこつラーメンしかり、ラーメン自体をはじめて食べる方々は『こんな食べものがあったなんて、今まで知らなかった!』と驚いて、通常は軽視されがちなベジタリアンのラーメンも、非常に好評です」

まだオープン1ヶ月ながらサンジェルマン店は常連客も多く、中には2週間で4~5回も足を運ぶリピーターもいるそうです。来店客の比率は日本人2割に対して外国人8割。スープ文化が根付くフランスでは、ラーメンのスープを全て飲み干す人もいるのだとか。何も残っていない器は何よりも「美味しい」という食体験を物語っているのかもしれません。

「オーダーの出数を見ていると、日本でいうトッピング全部のせである『スペシャル』が一番多く、日本では、いわゆるソウルフードに位置付けられるラーメンも、パリでは特別な舶来品という位置付けにあるのかもしれません。ただそこを、日常の食事のオプションのひとつに含まれるよう努力していくのが我々のラーメンを世界の共通語にしていく、というミッションの1つなのだと思います」

常連客も多い
来客比率は日本人2割、外国人8割

サンジェルマン店では、日本の一風堂と同様に、替え玉のオーダーが非常に多いそうです。「カタ」や「バリカタ」といったとんこつラーメンの専門用語が来店客の間で頻繁に交わされているのを想像すると、ちょっとびっくりですよね。またメニューとは別に、「Zuzuttoカード」という「どうやって美味しくラーメンを食べるか」を説明するツールも店内に設置しているのだとか。欧米では音を立てて麺をすするのはNGとされているけれども、「ラーメンはずずっと(Zuzutto)すすって食べるのが一番美味しい」と、パリジャン・パリジェンヌたちにラーメンの流儀も広まったならば、日本の食文化への理解もさらに深まりますね。

今夏には、当初パリ1号店のはずだった「パリ・ルーヴル店」(仮)もオープン予定です。新たなオリジナルメニューの誕生も気になりますが、個人的には「MIHARA YASUHIRO」が手がけたパリのユニフォームのように、ラーメンから派生するファッション、カルチャー、アートとのコラボレーションにも注目しています。やっとパリの初陣を飾った一風堂、今後の展開から目が離せません。

一風堂サンジェルマン店

一風堂 サンジェルマン店
14 rue Grégoire de Tours, 75006 Paris, France
http://www.ippudo.fr

加藤将太

WORDS by SHOTA KATO
加藤将太 / OVER THE MOUNTAIN

IPPUDO OUTSIDE 編集担当。1981年、山梨県生まれ。紙・ウェブ媒体の企画・編集・文章執筆からイベント・番組の司会進行まで幅広く担当。2011年3月にウェブマガジンCONTRASTの立ち上げに携わり、2013年7月より世田谷は松陰神社商店街のシェアオフィスを活動拠点とする。2014年10月には自営業の屋号として「OVER THE MOUNTAIN」を開設。今日も明日もこれからも「ひと山を越え続ける」。

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