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アイデアと工夫を武器に、正統派とは違うところで勝負を

食について伺いたいのですが、鈴木さんは過去に「ラーメン」というタイトルのコラムを書いていますよね。そこで一風堂のことにも触れていて。

鈴木大器

今言われるまで忘れていたけど、ちょっとネガティブなことを書いたかもしれない(苦笑)。

はい(笑)。ニューヨーク店の行列時の待ち時間について書かれていて。

鈴木大器

30分くらいの行列は待てる感覚なんだけど、さすがに2時間となるとね。味として一風堂のラーメンはものすごく好きですよ。でも、ニューヨーク店は人気だからなかなか入れない(苦笑)。Yuskeがうちの事務所に来ると、「一風堂は入れないからなぁ」ってジョークっぽく言い続けていた時期もありました(笑)。

普段のランチはどういったお店に行っているんですか?

鈴木大器

事務所の目と鼻の先に『Tabata』というラーメン屋があって、大概そこでラーメンとチャーハンをセットで頼んで、ランチは15分くらいで済ませていますね。健太(宮本)と二人、もしくは一人で行くことがほとんどかな。

食から洋服作りのインスピレーションを受けることはありますか?

鈴木大器

ニューヨークの日本食レストランのシェフとたまたま仲良くなって、そこのカウンターで食事をしているといろいろな話を聞くんですよ。日本人が海外で高級な日本食レストランを経営する場合、通常は日本から食材を空輸して、日本と変わらないオーセンティックな料理、あるいはそれ以上のものを提供するというスタイルなんですね。そのシェフのお店は精進料理屋さんなんだけど、精進料理は馴染みのある京野菜がないとはじまらない世界じゃないですか。でも、彼はすべてローカルの食材に徹したんですよ。ニューヨークのファーマーズマーケットやファームを回って食材を探して。

アメリカと日本の野菜は形も味も違いますよね。

鈴木大器

そうそう。彼は自分のアイデアと工夫で日本風に見えるように調理して、新しい味を引き出しているんです。その話を聞いてすごいなと思ったし、自分たちの洋服作りのプロセスとすごく近いなとも感じて。そういった部分では食から刺激を受けたことがあります。

鈴木さんが言う、アイデアと工夫の重要性はどんな分野にも共通していると思います。

鈴木大器

正統なプロセスを貫いている人は素晴らしいけれども、そことはまったく違う考え方で今までにないものを作るというのも面白いじゃないですか。通常の洋服の良さは、良い素材を良い工場で良い職人が素晴らしいクオリティで作るということなんです。自分たちがニューヨークで作るということは基本的に良い工場を使っているんだけど、名だたるブランドとは違うところで勝負しなきゃいけない。正統派は正統派として競争をしているけれども、自分たちはそれができないから彼らができないことをやろうと。その発想とすごく近いなと感じたんですね。

鈴木さんが洋服作りで実践しているアイデアと工夫を挙げるならば、どんなものがありますか?

鈴木大器

昔はウールで作った洋服を水洗いして商品化するなんてタブーでした。今では珍しくなくなったけど、そういうことを自分たちは普通にやってきたんです。基本的に綺麗でシワがなく捻れていないものが良い洋服の条件なんですね。でも、それとは逆の発想をとりました。縮みとねじれが洋服を面白くするから。

なるほど。決して奇をてらったわけではなく、純粋にかっこよくて面白い洋服を追求した結果だったんですね。食に関していえば、昨今はファッションと飲食が融合する事例が増えてきていますが、鈴木さんは興味がありますか?

鈴木大器

自分では料理を作ったりしないから、どれくらい難しいことなのかはわからないけど、ウチの社長の清水(清水慶三、ネペンテス代表)と僕はとんかつが大好きなんですよ。清水とは昔から「ニューヨークでとんかつ屋をやりたいね」なんて話はしてきました。店の名前も決まっているんですよ、『NEPENTEI』っていう(笑)。

意外にもシンプルな名前なんですね(笑)。

鈴木大器

そんな発想だけはあるけれども、やっぱり自分たちは洋服屋だから、新しい領域を始めて苦労するよりは、地道に洋服を作っていこうということになって。たしかに上手く飲食店を経営しているファッションの会社もあるけれども、自分たちはとにかく不器用で洋服が好きで。でも未だに美味しいとんかつ屋がないんですよね、ニューヨークには(笑)。

「とにかく不器用で洋服が好き」というのは、ENGINEERED GARMENTSやネペンテスを言い当てていると思います。そこに発想の転換と工夫があったからこそ、独自の地位を築いているのだと思います。

鈴木大器

自分は店での仕事が長かったんだけど、シャツを畳んだり、ディスプレイを作ったり、掃除をしたりして一日が過ぎていく中で、こうしたほうが面白いと思って工夫していくうちに洋服を理解できたことも多くて。

宮本健太

大器さんは教えるというよりは自分で見つけるような雰囲気を作ってくれていると思います。僕を含めて事務所の連中も自分たちの個性を大切にしているので、好きなものを掘り下げて、それをネペンテスという組織の中で昇華させていくというか。

鈴木大器

自分たちはネペンテスという会社にいるから、さっきの精進料理の話ではないけど、その枠がある中で工夫をしていくんです。個人としても、なんでもありという環境より、条件と制約がある中で面白いことをやってくれとリクエストされる方が燃えるタイプ。だから、一風堂のユニフォーム作りも楽しく取り組ませてもらいましたし、これからもそういう服づくりをしていきます。

鈴木大器

鈴木大器(すずきだいき) NEPENTHES AMERICA INC.代表、「ENGINEERED GARMENTS」デザイナー。1962年生まれ。1989年渡米、ボストン、NY、サンフランシスコを経て、1997年より再びNYにオフィスを構える。2008年CFDAベストニューメンズウェアデザイナー賞を受賞。日本人初のCFDA正式メンバーとしてエントリーされている。
鈴木大器氏コラム

ENGINEERED GARMENTS(エンジニアド ガーメンツ)

1999年より鈴木大器氏が手掛ける、アメリカの古き良き時代の優れたデザインを再編した完全なるアメリカ製のオリジナルウェア。“良き時代のアメリカが好きな、へそまがりの大人のための地味な普段着”を、個性と経年変化を大切にしたスタイルとともに提案している。
ENGINEERD GARMENTS オフィシャルウェブサイト

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www.ippudony.com

IPPUDO ARRIVE A PARIS

UNIFORM

ENGINEERED GARMENTSが一風堂のユニフォーム製作において大前提として考えたのは、耐久性があり、洗えて、経年変化で良い味わいになるユニフォームであること。大枠としては、アメリカのワークウェアというデザインベースがあるものの、色使いはデニム、ブラウンダック、ナチュラルドリルといったUSワークウェアの定番色ではなく、あえて、くすんだトーンのネイビーを採用。また、一風堂の「1年間を通して着用できるもの」というリクエストに沿って、素材には6.5オンスのツイル素材のコットンを使用し、店舗で使用するには勿体ないほどに、クールかつユニークなユニフォームに仕上がった。

IPPUDO ARRIVE A PARIS

IPD Jacket

MATERIAL: 100% Cotton Navy 6.5oz Flat Twill

従来ユニフォームのステッチとは、ネイビーに対して白のステッチを選ぶように、生地とコントラストになったものが多いが、一風堂のジャケットには鈴木さんが当時ハマっていたネイビーに黒のステッチをかけるというデザインが用いられている。ワークウェアの定番ディテールであるトリプルステッチを随所に施していることからも、ワークウェア元来のイメージを残しながら、新しくかっこいいユニフォームを製作しようとする意図が垣間見える。

ジャケットのプロトタイプでは、ペン挿しがポケットの中心に配されていた。しかし、一風堂サイドからその位置を端に変えてほしいというリクエストがあり変更。ENGINEERED GARMENTSとしては、アメリカのオーバーオールのディテールのまま中心にペン挿しがある形で製作したが、実際にユニフォームを着用して働く現場の意見からはじめて気づくこともあったという。その他にも、夏場の厨房で少しでも快適に作業できるようにということで、ジャケットの脇下部分に大胆なベンチレーションを作り、熱を逃がせるように設計。ジャケットとエプロン、どちらにもラーメンをモチーフにしたグラフィックがプリントされている。

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IPD Tablier

MATERIAL: 100% Cotton Navy 6.5oz Flat Twill

実用性に関わるディテールの改良はエプロンにも反映されている。ENGINEERED GARMENTSは通常コレクションで典型的なワークウェアとしてエプロンを発表しているが、その丈を一風堂のエプロンに落とし込むと長すぎて使いにくいということが製作の途中段階でわかったという。以前、ENGINEERED GARMENTSがニューヨークのとあるレストランのために作ったエプロンも丈が長いものだった。ところが、一風堂ではスタッフが店内で来店客のオーダーをとるときに膝を曲げることもあるために、エプロンの丈を膝が曲げられる長さに改良しなければならない。そういった実用性についての理解は、コミュニケーションを重ねることで深まっていったのだった。

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