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INTERVIEW

条件と制約が、面白いクリエイションを生み出す

ENGINEERED GARMENTSと一風堂のコラボレーションとはなんだったのか

2014年の暮れに数々のウェブメディアで報じられた、ENGINEERED GARMENTSと一風堂によるコラボレーション。MADE IN NEWYORKを貫くUSワークウェア由来の大人気ファッションブランドが、一風堂ニューヨーク店(IPPUDO WESTSIDE)のユニフォームを製作したー 突然舞い込んだ想定外のニュースは、ラーメン店のユニフォームとは思えないイメージビジュアルを前面に打ち出し、日本国内のファッションファンを中心にセンセーショナルな衝撃を与えたのでした。

あれから約2年。当時の大きなインパクトの影に潜んだプロジェクトのストーリー、そしてユニフォームのディテールについて、ENGINEERED GARMENTSデザイナーの鈴木大器さんとアシスタントデザイナーの宮本健太さんが振り返ります。未だ鮮明に焼き付くラーメンとファッションのコラボレーション、そこから浮かび上がるものとは。

WORDS by SHOTA KATO PHOTOGRAPHY by HIDEKI ANZAWA

熱意に応える形で実現したコラボレーション

ENGINEERED GARMENTSは、直近ではVANSやTIMEXとコラボレートしていますが、一風堂との協業はニューヨークの店舗、IPPUDO WESTSIDEのユニフォームの制作という通常のコラボレーションとは異なる形でした。改めて、鈴木さんの中ではどんなプロジェクトだったと振り返りますか?

鈴木大器

特に日本国内でのリアクションが大きかったので、かなり印象に残っていますね。コラボレーションには大きく2種類あると思っていて。ひとつは個人的なモノへの思い入れがある場合、もうひとつは人への思い入れ。一風堂の場合は完全に後者でした。もちろん「一風堂」は有名だし、ニューヨークのお店でラーメンを食べたこともある。ただ間違いなく言えることは、今回のコラボレーションは一風堂ニューヨーク店のYusuke*の情熱があったから実現できたということです。

※Yusukeとは一風堂NYの社員中村祐介のこと。鈴木大器さんは中村を親愛の情を込めてニックネームのYusuke(ユウスケ)と呼んでいます。

宮本健太

そうですね。正直、祐介さんじゃなかったらお受けできなかったと思います。祐介さんの熱意が伝わってきて、その気持ちに応えさせていただいたという感じですね。

中村さんは、そもそもネペンテスのニューヨーク店に通っていて、ENGINEERED GARMENTSのファンだと聞いています。

鈴木大器

最初にYusukeが事務所に来てユニフォームを作ってほしいと相談してくれたとき、あいにくシーズンの立ち上げ前で忙しかったんです。彼の熱意になんとか応えてあげたい気持ちはあったのだけど、いつ受けられるのか時間が読めなかったので、急ぎでなければタイミングがあった時に実現させようという話をさせてもらいました。話をいただいてから、1年くらいかけてユニフォームが完成したんじゃないかな。

宮本健太

僕らにとって、20~30枚の生産は少なすぎて厳しいんです。しかもニューヨークで製造するとなれば、値段もそれなりに高くなってしまいます。なので、最初はユニフォームとしては、かなりコスト高になってしまう、とネガティブなことしか言えなかったんですね。それでも祐介さんは僕らの事情を上司の方に掛け合った上で、どうしても作ってほしいと言ってくださって。何度かコミュニケーションを重ねて、ユニフォームを作らせていただくことになりました。

一風堂ニューヨーク店のユニフォーム、そのディテールとは

ユニフォームの発想について伺いたいのですが、日本では「ラーメン店なのにかっこいい!」という反響でした。ラーメン店は、男性が腕を組んで睨んでいるビジュアルを想像しやすいと思いますが、どういうお考えでユニフォームを作ったのでしょうか。

鈴木大器

耐久性があり、洗えて、経年変化で良い味わいになることを意識しました。最初はデニムという案もあったんですが、Yusukeが自分たちの洋服のファンであることから、ある程度求めている部分がわかるじゃないですか。

大枠としては、アメリカのワークウェアというデザインベースですね。

鈴木大器

そうそう。アメリカのワークウェアといえば、デニムとかブラウンダック、ナチュラルドリルといった色味を連想しやすいのですが、いわゆるワークウェアの定番色ではなくて、あえてネイビーを使いたいなと思ったんです。

ネイビーといってもくすんだ色合いのものを使っていますよね。

鈴木大器

たとえば、フランスの作業着はロイヤルブルーのものが多いんです。ああいったブルーでも違うトーンにしたいなと。それで、ユニフォームの生地を作っている生地屋さんから、このネイビーの生地を使わせてもらいました。ちなみに、ユニフォームのステッチというのは、ネイビーに対する白のように、生地とコントラストになったものが多いんですが、当時ハマっていたネイビーに黒のステッチをかけるというデザインを使って、もともとのワークウェアのイメージを残しながらも新しくかっこいいものを作ろうとしました。

ワークウェアのディテールの定番ともいえるトリプルステッチが随所に施されていますね。

鈴木大器

そういったところも本気で取り組んでいて。どうせやるなら、お店で使うには勿体ないくらいの本気でかっこよくて面白いものを作りたいですからね。その分のコストは掛かりますが、そこにもちゃんと理解してくれました。

ENGINEERED GARMENTSには、ブランドの立ち上げから一貫として「働く男の洋服」というベースがありますが、通常のコレクションと比べて、このような業種が絞られたユニフォームの製作はそのプロセスに何か違いがあるのでしょうか。

宮本健太

一風堂さんとのプロジェクトに関していえば、やはりすべてが祐介さんとの対話から生まれたものなので、一風堂さんが求めるユニフォーム像に寄せていった感じがあります。その中で驚いたのは、製作が進行してからは何でもOKというわけではなくて、祐介さんから細部に至るまで具体的な指定があったんです。プロトタイプを作ったら、それを持ち帰っていただいて、シェフやウェイターの方たちの意見を僕らにフィードバックしていただく。それをまた僕らがそれを反映させるという繰り返しを経て完成しました。

なるほど。実用性の部分でラーメン店の現場の視点が入ってきたんですね。

鈴木大器

憶えているのは、ジャケットのプロトタイプではペン挿しが真ん中にあったんだよね。その位置を端っこのほうに変えてほしいというリクエストがあって。自分たちはアメリカのオーバーオールのディテールのまま真ん中にペン挿しがある形で作るのだけど、一風堂の使い勝手としてペン挿しは横にあったほうがいいということで。他にも、ラーメンをモチーフにしたプリントを入れてほしいというリクエストもありました。

宮本健太

エプロンも、僕らが通常のコレクションで作っている丈では長すぎて使いにくいということがわかって。そういった実用性に関わるディテールの事情は対話してみてはじめて気づけたことですね。一風堂のスタッフの方は店内でお客様のオーダーをとるときに、膝を曲げることもあるじゃないですか。膝を曲げられる丈にしなければならないということは、僕らにはわからない部分でした。

鈴木大器

以前、とあるニューヨークのレストランのエプロンを作ったことがあるんですが、それも丈が長いものだったんですよ。エプロンはワークウェアの典型的なアイテムのひとつであって、それをファッションに落とし込んで、面白いスタイリングに仕上げたいんです。自分たちは見た目のかっこよさや面白さを追求するという視点で洋服を作っているから、どちらかというと実用性は度外視なんですね。昔のワークウェアのディテールの面白さをフィーチャーさせて、そこでどう遊べるかを考えるという感覚なので、通常のコレクションでは着たときの迫力をイメージしています。

そのお話を踏まえると、ユニフォームは逆の視点ですよね。でも、ベースの考え方としては通常のコレクションと一緒のようにも感じます。その他に、一風堂のユニフォームだからこそのアプローチはありますか?

宮本健太

いただいたリクエストが「1年間を通して着用できるもの」ということだったので、6.5オンスぐらいのツイル素材のコットンを使っています。夏場の厨房でも少しでも快適でいられるように、ジャケットの脇の下にベンチレーションを大きくとって、熱を逃がすようにしています。

ニューヨークで暮らしている中で、印象に残っているユニフォームはありますか?

鈴木大器

個人的にユニフォームというか作業着が好きですね。特に1920~30年代のワークウェアがすごく好き。40~50年代でワークウェアは淘汰されて、60年代以降は大量生産時代になっていて。そこまでに作られた凝ったディテールをいかに省いて簡単に安くたくさん作るのかという時代に移っていったんです。それ以前のワークウェアは本当に面白いですよ。デザイナーというものが存在しなくて、必要に迫られて作っていったものがその時代に生きていたから。

宮本健太

日本ではどのユニフォームもいわゆる制服化されていますけど、ニューヨークでは小さいカフェやコーヒー屋だと私服の上からエプロンをかけているだけ、ということがほとんどなんです。その自然なスタイリングがすごく上手いなと感じますね。タトゥーもがっつり入っていたりするので、なかなか日本では嫌がられる雰囲気だとは思いますけど。

鈴木大器

肉屋とか電気屋とかのユニフォームがめちゃくちゃかっこいいんですよ。欲しいくらい。特にUPSという運送屋さんのユニフォームは短パンもTシャツもあって、文句なしにかっこいい。ツナギを着ているガレージの人たちも何気なく上半身を落としていて、それがかっこよかったりする。ハーブ・リッツの写真の世界そのものですね。そういう意味では、飲食店のユニフォームでかっこいいものはまだ見たことはないかな。かっこいいは別として思いついたのはフーターズくらい(笑)。

宮本健太

コスプレっぽいけどアメリカらしいし、完成度という意味では相当高い(笑)。

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